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中学受験が、かつてのような「一部の家庭だけの特別な選択」ではなくなってきています。最新の調査では、首都圏で「5.5人に1人」が中学受験を経験し、受験者数は52,300人という規模にのぼると報告されています。ここまで母数が大きくなると、「うちも受験を視野に入れたほうがいいのかな?」と考えるご家庭も増えてきているのではないでしょうか。
一方で、その裏側にはお金・時間・メンタルなど、さまざまなコストが重なる現実もあります。この記事では、外部の調査データをベースにしながら、「受験投資をどこまでと考えるか」「家計とのバランスをどう取るか」について、かつて中学受験を経験した父親として、そして現在は長男の受験に伴走している親としての実感も交えながら整理してみます。
この記事で伝えたいこと
- 中学受験の経済的・時間的・メンタル的な「見えにくいコスト」を一度立ち止まって見つめ直すこと
- 外部の調査データを手がかりに、「わが家ではどこまでを受験投資として許容するか」を考える視点を持つこと
- 合否や偏差値だけでなく、受験を通じた成長や家族のバランスも含めて「わが家にとっての健全ライン」を言語化していくこと
「#中学受験は健全か」プロジェクトが映す、中学受験の「いま」

今回話題にしているのは、「#中学受験は健全か」に関する調査です。(「#中学受験は健全か」特設サイト|https://sprix-chu-ju.jp)
受験経験者・保護者などを対象にした大規模なアンケートで、以下のようなポイントが見えてきたとされています。
- 首都圏で中学受験を経験する子どもは「5.5人に1人」
- 受験期のストレスや自己肯定感の低下など、子どものメンタル面での負荷が目立つ
- 親の関与度は高い一方で、「もっと関わってほしかった」という子どもの声も一定数ある
「子ども」「家庭」「環境」にかかるコストを分解してみる

子どもにかかる負荷 ― ストレスと自己肯定感のゆらぎ
SIL×SPRIXの調査では、多くの子どもたちが「学習ストレス」「プレッシャー」「自己肯定感の低下」を経験したと回答しています。特に小6直前期は模試や講習、宿題の量が急増し、「12歳のメンタルクライシス」という言葉が使われるほど、精神的な負荷は見過ごせない状況になります。
学力や偏差値という“結果”では映らない、心の余白や余力。これを「見えないコスト」として、家庭も社会もちゃんと認識すべきだと感じます。
家庭側の負担 ― 経済コスト、時間コスト、生活リズムの変化
ある調査によれば、中学受験にかかる費用の平均は数百万円規模にのぼるとも言われています。塾の月謝だけでなく、講習、模試、受験料、参考書・教材費、交通費など、見逃せない項目が積み重なっていく構造です。
さらに時間コストとして、親の送迎・宿題管理・願書や出願作業など、生活の大部分を受験が占めるようになり、「家の中に余白がなくなる」感覚を持つ家庭も少なくありません。
学習環境・社会的圧 ― 競争、塾・模試・講習の過密スケジュール
塾ごとのオプション講座や模試は年々増加しており、「やっていないと不安」「周囲が受けているから」という空気に押されて、過剰投資になりやすい状況もあります。
私自身とわが家のリアル――一次経験と“父親として伴走”の実感

過去の自分の受験体験 ― 成績、プレッシャー、家庭事情
私自身の中学受験当時は、模試の成績や偏差値に強く振り回されながら、「もっとやらなきゃ」という焦燥感の中で日々を過ごしていました。今振り返ると、結果よりも「家族も一緒に揺れながら走っていた」記憶のほうが残っています。
現在のわが家 ― 長男の成績、家庭のルール、精神状態の観察
現在は長男の受験に伴走していますが、第一に重視しているのは「子どもの健やかさ」と「家庭のバランス」です。塾や模試のオプションを増やすことは簡単ですが、わが家では「生活リズムと表情」を基準に、無理のない範囲で選択を行っています。
“見えないコスト”とは? 金銭・時間・メンタル負荷の実態

塾代・模試代・教材費・交通費 ― 受験費用の実際の構成要素
受験費用は月謝だけではありません。模試・講習・受験料・参考書・交通費など、細かい項目の積み重ねで、負担は想像以上に大きくなります。
時間コスト ― 通塾時間、宿題量、送迎、生活のリズム
通塾時間や送迎、宿題への付き添いなど、受験が家族の日常の多くを占めるようになります。共働き家庭や兄弟がいる家庭では、時間のやりくり自体が大きな負担になることもあります。
メンタルコスト ― 子どもの疲労・不安・自己肯定感の低下、親のストレス
結果が出ない時期、テストが続く時期、子どもは不安やストレスにさらされます。親もまた、「もっとやるべきか」「このペースで大丈夫か」と悩み続けます。これらの「見えない負荷」は、受験投資を考える上で無視できません。
それでも受験を選ぶ家庭がある理由――夢・期待と葛藤

将来の選択肢/教育機会としての受験
良い教育環境や進学実績を求め、自分に合いそうな学校を選べるのは中学受験のメリットです。校風やカリキュラムの違いに魅力を感じる家庭も多いでしょう。
親の理想と社会の期待 ― “成功”を目指す親の価値観とプレッシャー
「成功してほしい」「可能性を広げたい」という親の思いと、周りのプレッシャーが重なることで、過度な投資につながることもあります。
家庭の“線引き”をどう考えるか――適切なバランスと選択肢

費用対効果 ― 必要な支出と見直せる支出を見極める方法
受験費用はいくらでも積み上がるからこそ、「どこまで許容するか」を家庭ごとに決めておく必要があります。模試や講習は目的を整理し、本当に必要なものだけを選択します。
子どもの性格・ペースを尊重 ― 無理な詰込みではなく、成長に合わせた設計
集中力、疲労の回復力、気持ちの切り替え方は子どもによって違います。成績表だけでなく、「最近よく笑えているか」「朝の表情はどうか」などのサインを観察し、無理のない範囲で進めていきます。
家族との話し合い ― 受験目的、生活の質、心と体の余裕について共通認識を
受験は家族全員の生活に影響します。「受験の目的」「大事にしたい生活の質」「家計の許容範囲」を言語化し、共通理解を持つことが重要です。
私ならこう決める――受験における「許容ライン」の描き方

私があらためて受験に向き合うなら、まず「受験にかけるお金と時間とメンタル」の総量をイメージします。
- 塾は1つに絞る
- 模試・講習は「目的が明確なもの」を選ぶ
- 家庭学習と生活リズムを優先し、過度な詰込みは避ける
- 家計に占める受験費の割合を定期的に確認する
受験はゴールではなく、その先の生活が本番です。だからこそ、過度な投資で家庭の余力を削らないよう、「許容ライン」を持つことが大切だと感じます。
未来につなぐ受験――健全さを問い直すために

中学受験は合否だけの勝負ではありません。学び方、考え方、自分との向き合い方、家族のコミュニケーション――受験を通じて得られるものは、偏差値以上に価値があるものばかりです。
同時に、家計の負担、子どものストレス、親の不安と葛藤も存在します。それらを天秤にかけながら、「どこまでが健全か」を家庭ごとに言語化することが大切だと思います。
他の家庭や有名校の事例に引っ張られる必要はありません。わが家にとっての価値観・ペース・余力を大切にしながら、家族に合った形で受験と向き合っていければと思います。


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