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朝、出勤する前に長男との会話は「昨日の宿題やっといてね」。
夜、家族が寝静まってから帰宅して筆者がまずやることは長男の”やることノート”で今日やったことを確認すること──。
気づけば、私は“伴走しているつもり”で、子どもの学びを管理していたのかもしれません。
中学受験を支える親の多くが、「私は子どもの伴走者だ」と信じています。
でも、テスト結果に一喜一憂し、進捗を見張るようになると、
“伴走”はいつの間にか“監視”に変わります。
この記事では、教育学者・樋口万太郎氏(中部大学准教授)が提唱する 「自己調整学習(Self-Regulated Learning)」の理論を手がかりに、
「支える」と「縛る」の境界線を一緒に考えていきます。
自己調整学習とは──“学びを自分でまわす力”

樋口氏によれば、これからの時代に必要なのは「知識量」ではなく、
「自分で学びをデザインする力」です。
自己調整学習とは、子ども自身が学習の目標を立て、実行し、振り返り、改善する力のこと。
つまり、「自分の学び方を学ぶ力」です。
OECDの PISA2022調査 によると、 日本の生徒は学力では上位にあるものの、
「自律学習」や「自己効力感」の得点は37か国中34位。
樋口氏はこれを「学びに自信を持てない優等生構造」と呼び、
“やらされる学び”から“自ら考え選ぶ学び”への転換を訴えています。
「自由進度学習」に潜む誤解

「自由に進めていいよ」という放任と、
「自分の学びを自律的に進める力を育てること」は、似て非なるものです。
本来の自己調整学習は、「目標→実行→振り返り→改善」のサイクルを自覚的にまわすこと。
教師や親の役割は、答えを与えることではなく、
問いを投げかけ、思考を促す“伴走者”になることです。
「伴走」という名の管理をしていないか

我が家でも、息子の学習を支える中で、
「宿題終わった?」「明日のテストは?」と声をかけるうちに、
気づけば“やらせる構図”になっていました。
でも、樋口氏の理論に出会い、はっとしました。
伴走とは、横に並んで走ること。
前でも後ろでもなく、同じ方向を見て、
「自分で考える時間」を尊重することなのだと。
親ができる5つの支援法

樋口氏の考えを家庭で生かすには、
「管理」でも「放任」でもない“中間”の関わりが必要です。
以下の5つが、実践しやすい支援法です。
- 目標を一緒に言語化する
「今週はどこまで進めたい?」──結果ではなく“方向”を共有する。 - 日々の振り返りを可視化する
「今日のがんばりを3行で書いてみよう」など、記録化で思考を整理。 - 結果よりプロセスを褒める
「どんな工夫をしたの?」「どこで粘れた?」に焦点を当てる。 - 選択の余白を残す
教材や順序、休憩タイミングなど、少しでも“選ぶ経験”を渡す。 - 問いを手放さない
「どうすれば次はうまくいくと思う?」──この一言が伴走の核心です。
「失敗の使い方」が学びを深くする

樋口氏は、失敗を「成長の素材」として扱う重要性を説きます。
失敗を責めるのではなく、原因を分析し、次に活かす。
それが自己調整学習の本質です。
我が家では、間違いノートを「罰」から「発見ノート」に変えました。
「なぜ間違えたか」「どう考えたか」を記すだけで、
子どもが“自分の考え方”を見える化できるようになったのです。
「信じて待つ」も、立派な教育

自己調整学習の視点で見ると、親ができる最大の支援は“待つ力”です。
問いかけたあとは、子どもが考え抜く時間を尊重する。
答えを急がせず、「見守る勇気」を持つこと。
“教えない勇気”を持てたとき、
親子の関係は「支配」から「共育」へと変わります。
今夜、できる一歩

もし今夜、子どものノートを開く時間があったら、
「どこが一番難しかった?」とだけ聞いてみようと思います。
その問いが、“管理”を“信頼”に変える最初の一歩になるかもしれません。
📚 参考資料
- 樋口万太郎『その自由進度学習、間違っていませんか?』(明治図書、2025年)
https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-306625-5 - OECD PISA2022公式レポート
https://www.oecd.org/pisa/publications/pisa-2022-results.htm - 東洋経済オンライン「『やらされる学び』から抜け出すために」
https://toyokeizai.net/articles/-/908928 - YouTube「樋口万太郎チャンネル〜みんなでまなボウズ!」
https://www.youtube.com/@manataro_higuchi


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